電子マネーを理解するためのオススメ書籍のご紹介、最終回の第3回です。
BUSINESS LAW JOURNAL 2012年02月号の特集「法務のためのブックガイド2012」でも取り上げられていた本なので、法務パーソンの中にはすでにご購入済みの方も多いでしょうか。
バーチャルマネーと企業法務―電子マネー・ポイント・電子記録債権販売元:民事法研究会
(2011-08)
販売元:Amazon.co.jp
この本の特徴は、前2回でご紹介した本ではあまり触れられていない「ポイント」制に対する法規制について詳しく触れられている点です。そう、飛行機を利用したり家電量販店で買い物をすることによって貯まり、その後は電子マネーのように商品・サービス購入に充当できるあの「ポイント」です。
実は、スイカのように現金と引き換えに購入する「電子マネー」は資金決済法による届出義務や発行保証金の供託等の規制がかかる一方で、商品・サービス購入によって貯まる「ポイント」については、それらがないのです。え?いまやマイルとビックポイント同士が交換できたり、Tカードのように店舗をまたがって貯めたり使ったりできる点、スイカと同じどころかむしろもっと便利に使えて流通性も高いポイント制なのに、一体なぜ?と思われるかもしれません。その疑問はごもっとも。実は、資金決済法の立法時には当然に規制の対象とすべきではないかと経産省等において議論がなされたのですが、簡単に言えば「ポイントまで規制しだすと、商店街のスタンプカードの類まで規制しなくてはならなくなって、キリがなくなるから」という理由によって、原則として規制対象外とされたという経緯があります。
では、規制対象となる電子マネーと規制対象とならないポイントを区別する基準は何か?
それは金銭等対価を支払って購入したものか、それとも商品・サービス購入のオマケとしてついてきたものかで分けられています。厳密に言えば気にすべき点はいくつかあるのですが、原則としてははこれだけ。オマケだったら、資金決済法は意識しなくてよい、ということになっています。
しかし、資金決済法の規制がないからといって、何でも自由にやって良いかというと、そうではないことには注意が必要です。意識しなければならない法規制として、以下のようなものがあります。
・消費者契約法:不実告知・不利益事実の不告知をおこなっていないか
・景品表示法 :不当表示(有利誤認)・不当景品類規制にあたらないか、公正競争規約に違反しないか
・独占禁止法 :値引きを踏まえた実質的な販売価格が不当廉売規制にかからないか
特に、景表法の実務経験がある法務の方なんかはご想像がつくと思いますが、自社のポイントが景表法にひっかかるかどうかを場合分けしだすと、P140にあるこの図のような大変なことになったりと、法務的にはろくなことはありません。

このように、実務上は電子マネーよりも神経を使わなければいけない場面が増えそうなポイント制の採用は、法務としてはご勘弁願いたいところ。それでも、リピーターを呼ぶ効果が明らかにある以上、マーケティング戦略的に採用する企業は増加していくことでしょう。SNSを通じたマーケティングがこれだけ流行ってくると、ソーシャルweb上でのクチコミ行動をポイント化するなんていう手法もだんだん増えていきそうで(これはこれでステルスマーケティングと叩かれるリスクも伴いますが)、法務としての検討機会も増えていくのではないかと思います。
実はそんなことも知らずに昔っからポイント制を導入してましたよ・・・、という無邪気な会社さん含め、この本が手元にあると何かと心強いと思います。









