ここ数年でグローバル展開をはじめた日本企業が、中国以外のアジア主要国にも拠点を出し、現地採用をはじめてしばらくたったぐらいの、ちょうど今をとらえた待望の書。


アジア労働法の実務Q&Aアジア労働法の実務Q&A
著者:安西 明毅
販売元:商事法務
(2011-11)
販売元:Amazon.co.jp



インド・インドネシア・シンガポール・タイ・ベトナム・マレーシア計6カ国について、序章で大まかな比較をしたうえで、1カ国あたり70-80ページずつ使って、各国の法体系・労働関連諸法の概説・Q&Aという構成でまとまめられています
はしがきにこの本のウリが凝縮されていますのでご紹介。

中国に関しては、多くの日系企業が既に進出していることもあり、中国の労働法を日本語で解説した文献も多く見られるものの、その他のアジア諸国の労働法については日本語による解説書は極めて少ない。さらに、各国の労働法について一覧性がある文献はほとんど見当たらない。
このような点を踏まえ、本書において工夫した点は、まず一覧性である。日系企業がアジアの一国だけに進出していることはあまりないため、各国の包括的、比較的な視点が必要である。この点を考慮して、できるだけ質問の項目を揃え、また最初に比較表を作成し、各国ごとの特徴が明確になるよう工夫した。

私も仕事がらアジア各国の労働法は進んで調査し学ぶようにしていますが、いざ専門家が書いた信頼のおけるアジア労働法の解説書を探してみると、これがほとんど見当たらなかったりします。たとえば今大人気の国シンガポールをとってみても、解雇に正当事由が不要など法律が会社側に有利にできており、そもそもビジネス上問題となる法的論点が少ないことから、それを解説する法律書もほとんど存在しないのです。それ以外の国についても、日本のように書籍文化が発達しているわけもなく・・・。欧米労働法の比較ならいざしらず、アジア新興国労働法を比較した信頼できる文献は、私が知る限り、“GETTING THE DEAL THROUGH”シリーズぐらいじゃないでしょうか。
そんな状況下、これだけ綺麗に情報が整理された本が日本にいながらにして入手でき、しかもそれが私たちの母国語で読めるということに、大袈裟かもしれませんがありがたみすら感じます。巻末付録になっているこの各国労働法制比較表を手に入れるだけでも、¥5,600(税別)払う価値があるというものです。

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もう1点、著者の顔ぶれがおもしろい。森濱田松本の小山洋平先生・塙晋先生、三宅山崎法律事務所の中山達樹先生、アンダーソン毛利友常の安西明毅先生、Rajah&Tann法律事務所在シンガポールの栗田哲郎先生という、アジアに留学・駐在経験をお持ちの5人が、事務所の垣根を超えて持てるノウハウを注ぎ込んでくださっています。ふたたびはしがきより。

執筆者らが、出向、勤務している(していた)現地法律事務所で実際に受けた労務相談の内容、現地法律事務所の労働法の専門家の意見を踏まえることで、法文上の議論だけではなく、実務の観点からの解決策を提示できるよう心掛けた。
本書の執筆者は、それぞれアメリカ・アジアのロースクールで学び、そして、アジアで出会って集った日本法の弁護士である。日本法の弁護士として、これから日系企業におけるアジア進出を支援していきたいという志のもと、意気投合した仲間である。

数か月後には、同じようなコンセプトの本が雨後の筍のように出版されることでしょうが、そのいずれもがこの本のパクリに見えてしまうであろうほどの完成度。著者の一人中山先生のブログによれば1年がかりだったそうですが、このような難しいプロジェクトを、他に先駆けていち早くまとめ上げて世に出してくださった5人の先生方に感謝して、大切に使わせていただきます。