いつもながら舌鋒鋭い海老原嗣生さんの『仕事をしたつもり』を拝読。
仕事をしたつもり (星海社新書)著者:海老原 嗣生
販売元:講談社
(2011-09-22)
販売元:Amazon.co.jp
きっと読んだ後、「“仕事をしたツモリーマン“じゃだめだ、明日から生産性で勝負だ!」と意気込むサラリーマンがほとんどでしょうけれど(私も)、その覚悟もいったい何日続くことやら(私も)。
日本のホワイトカラーの労働生産性が低いのは何故か。この議論は各方面でし尽くされている感はありますが、サラリーマンとしてマネジャー/メンバーの両立場を経験してみての私の実感としては、労働者の定義が
事業または事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう(労働基準法第9条)である以上は、労働者を使用する事業の経営者・管理監督者の指示が悪いから、という点に尽きると思っています。
マネジャーという役職が会社にある以上、メンバーには権限も予算も与えられていないはず。なのに「お前に任せた」とか「自由にチャレンジしてみろ」なんて、戯言に過ぎません。本当に任せてもらえるにしても、メンバーとしてはまず権限と予算を握るマネジャーに気に入られなければならないわけで、気に入られるためには、マネジャーの言う事を聞き、信頼を得るための手柄を立てるのが先になります。この構図がある以上、生産性の課題はマネジャーにまず原因があるはずです。しかし日本では、その上の経営者とメンバーとの間での板挟みを憐れむ「ああ、中間管理職って可哀想」などという同情ばかりが先立ち、マネジャーの責任が真剣に問われることはほとんどありません。
そして、このようなマネジャーの無責任体質が放置されているのも、煎じ詰めればマネジャーを任命し指揮する経営者にあると言えるでしょう。「お前の部署に任せたんだから、早く何かアイデア・改善策を持って来い」と無責任な指示だけマネジャーに出し、現場では悶々とした会議ばかり開かせ生産性を低いままにしている経営者こそが、諸悪の根源だと思います。今話題のスティーブ・ジョブズの自伝を読んでいると、彼はそういうことを放置しない“ダメ出しの厳しさ”にかけては本当に容赦がない経営者だったことが分かります。
スティーブ・ジョブズ I著者:ウォルター・アイザックソン
販売元:講談社
(2011-10-25)
販売元:Amazon.co.jp
ジョブズが極端な言動に走るのは、他人の感情を思いはかる能力がないからだろうか。そんなことはない。むしろ逆だといえる。ジョブズは感情というものがよく分かっている。他人の心を読むのも、他人の精神的な強さ・弱さ、自信のなさを把握するのもおそろしいほど上手である。不意を突き、狙いすました一撃をバシンと感情面にお見舞いして揺さぶりをかけることもできる。本当に分かっているのか、そのふりをしているのかも直感的にわかってしまう。だから、おだてたりすかしたり、説きふせたり喜ばせたり、あるいはまた、脅したりすることも名人級に上手なのだ。
これには良い面もあった。つぶされずにすめば強くなれるのだ。成果も上がった。おそれから、喜んでもらいたいという気持ちから、また期待されているとの思いから、皆、良い仕事をしたからだ。
「彼の言動は心を疲れさせる側面もありますが、それに耐えられれば一定の効果があるのです。」
のちにジョブズはこう語っている
「優れた人材を集めれば甘い話をする必要はない。そういうものだと僕は学んできた。そういう人は、すごいことをしてくれると期待をかければすごいことをしてくれるんだ。特A+のプレイヤーはそういう人同士で仕事をしたがるし、Bクラスの仕事でもいいと言われるのを嫌がる。そう、最初のマックチームは教えてくれた。(後略)」
では、そういうジョブズのような厳しい経営者・マネジャーに恵まれなかった場合に、自分自身で「仕事をしたつもり」からどう抜け出すか。海老原さんは以下のようにアドバイスされています。
まず、「仕事をしたつもり」を半分にする(ゼロにはできっこないから)。
残りの半分は、「仕事をしたフリ」をする。
「つもり」と「フリ」の違いは、前者は無駄な仕事を無駄と気づかず、一生懸命行うことであり、後者は、無駄と気づいて手を抜き、周囲に対して「しているように」ポーズを取り、その実、さっさと仕事を終えることです。
そもそもが無駄な行為なのだから、フリをしたところで、それほど成果は落ちません。
これで浮いた時間を、半分は余暇に費やします。例えば会社近くのスタバでコーヒーでも飲んで、疲れを癒すのです。
そして、残りの半分の時間を、真剣に考えることに費やす。
経営者がマネジャーを放置し、そしてマネジャーがメンバーであるあなたを放置しているなら、会社に文句を言うのではなく、海老原さんのアドバイスどおり50%だけ会社の仕事をして、50%は自分がマネジャーそしてゆくゆくは経営者になるための自分の時間に当て、あなた自身がいち早く会社の中で上に立ち、的確な指揮命令を次々と繰り出してダメなマネジャーと経営者が会社の中に貯めた膿を出す。こうするしかないでしょう。それが時間がかかって嫌だというなら、自身で競合会社を設立して社長になればいいのです。
さて、そこで早速海老原さんの教えに従い、具体的に法務の「仕事をしたつもり」を集めて半分にしなきゃとGoogle+で法務仲間の皆さんにご協力をお願いしたら、こんなにたくさん集まっちゃいましたよ!
- ルーティンな契約書レビュー・修正(こんな契約で事件は起こらない、起きてもたいした事故にならないことは法務が一番よくわかっていますが、レビュー件数が目標管理項目なんです)
- 建前でやるコンプラ研修の企画・実施(経営のwillが込められていないことは、従業員にもすぐわかります)
- 社内法務ポータルの整備(90ページビュー/月、うち法務部員のページビューが60)
- 海外の法令調査(自力でやると楽しいネットサーフィンのような)
- 官報の斜め読み(日経新聞読んで仕事をしたつもりの部長よりはましか)
- 代表者印の押印(自分の印鑑ぐらい自分で押せや)
- 役員への法務時事ネタレポート(本読んで自分で勉強しろや)
- 役員が行う説明のための資料作成(自分で作れや)
- 過剰なまでの取締役会の準備(会議室の机のセッティングにプロジェクターの準備、役員の名前は皆わかっているにもかかわらずネームプレートを並べて、ドリンクを準備して…)
- きれいな議事録づくり(うん、今回の袋とじはうまくいった、ハンコも鮮やかだね!)
- 弁護士との電話会議(ただの長電話じゃないのか…)
- とりあえず出席させられ、かつ発言機会を与えられない会議、ミーティング(そして後に「法務も了解済みの案件です」と語り継がれるのであった)
えっと、これらを引き算して残る法務の仕事って、なんでしたっけ(笑)。









