『雇用の常識「本当に見えるウソ」』以降、様々な出版社からリリースが続いた海老原さんの「就職・転職論」ここに極まれり、といった感じ。
就職、絶望期―「若者はかわいそう」論の失敗 (扶桑社新書 99)著者:海老原 嗣生
販売元:扶桑社
(2011-09-01)
販売元:Amazon.co.jp
新聞・旧メディアが騒ぎたて、行政(というか民主党)が乱発する“就職弱者救済のためのつぎはぎの施策”や、それに対してエリートホワイトカラー層が信奉する「解雇規制の緩和」「欧米型職務給への移行」のどちらもが、いかにピントがずれた解決策であるか、さらに「年寄りは全部ダメ、若者は全部かわいそう」という世代間論争がいかに失当であるかを、データやグラフを次々繰り出し解き明かす快心作。
- 高年齢になるにつれて平均勤続年数が長く、転職率が低くなるという構造は、流動性が高いと思われている欧米においても実は同じであり、45歳以上での転職率は日本同様10%を切っている。
- 失業率も、欧米・日本ともに高年齢になるにつれて低くなり、しわ寄せが若年者に寄せられる構造も同じ。日本の若年者の失業率はまだマシで、大卒者が就職先を選り好みしている点を見なおせば改善の余地もある。解雇規制の厳しい日本より、むしろ欧米の方が若年者の失業率は高い。
- ホワイトカラーのような職務難易度の高い職務であればあるほど“経験年数”がものをいうので、職務給にしたところで、採用しやすくなることもなければ熟年と若年の給与格差も狭まらない。日本でまだ今は高止まりしているエントリーレベルの職務にある熟年者の給与をさらに下げる方向に働くだけ。
- 欧米では、慣行としての「セニョーリティ(勤続年数が長い人ほど解雇対象とならない)」と法律としての「年齢差別禁止法」の両面で、実は日本よりも熟年者が保護されている。
1〜3は雇用慣行が違えども結果は同じになることを示しており、4についても09年の雇用対策法改正(改悪)に見られるように、日本も流れとしては同じ方向に傾いています。日本型の<終身雇用+メンバーシップ型雇用>を捨てて<解雇規制緩和+ジョブ型雇用>を採用したところで、労働市場において熟年者が優遇されやすい構造は変わらないし、問題の本質はそこにはない、ということを述べています。
では日本は、企業は、そして労働者はそれぞれどうすればいいのか?前二者についてはこの本をお読み頂くとして、労働者の立場について考えさせられた一節を引用して紹介させていただこうと思います。
ビジネスマンとは、各業界に細分化された「職人」でしかないということなのだ。これを「ビジネスマン」と一言で括るから汎用性が広く思えて、勘違いをしてしまう。
銀行も商社もメーカーも高度な職人であり、熟練に15年はかかる。それを40歳近くになって宗旨替えすることなど難しい。つまりスペシャリティを磨いたからといって、自由に次から次へと会社を選べるなどということは(40歳近くにもなれば)ほどんどあり得ないことなのだ。
では、同業内であれば、一社に縛られず、自由に生きられるか?これも実はけっこう難しいといえる。まず、ホワイトカラーの仕事は単独ワークではなく、たいていの場合、集団での業務となる。下っ端の時は、他者からの転職も構わないが、集団の上に立って人を指導するとき、「下にいる部下の素性がわからない」「横で連携すべき多部署の人とコネがない」ということがけっこう致命的となる。そして、その会社特有の意思決定メカニズムに慣れていないこともマイナスに働く。
結局、ハイパーを目指す人たちは、(突き抜けて経営幹部クラスにならない限り)、その多くが会社に従属して生きていくしかなくなる、それは、世界中の熟年層の転職率の低さからも窺えるだろう。
法務パーソンにとっては、純粋に法的な専門性よりも結局業界経験が一番重要なのであり、キャリア形成においてはどこの業界を選ぶかがポイントであるということは、私も最近ブログに書いていたところです。が、海老原さんはビジネスパーソンはすべからく熟年になればなるほど(業界どころか)企業に縛られるのが宿命であると仰っているわけです。
では、企業とも業界とも心中したくないビジネスパーソンはどうすればいいか?海老原さんは、中途半端にスペシャリストを目指してつぶしがきかなくなるよりも、エントリーレベル人材にあえてとどまることで「そこそこの自由」=流動性を確保した方がいいのでは、と説きます。どこかで似たような話を読んだなあと自分のブログを辿ったら、この本にも書いてありました。やはり真理なのでしょうか?
一方で、仮にエントリーレベル人材に甘んじることを受け入れようにも、業界特有性のない法律知識だけで解決できるような法務業務であれば、大増員した弁護士がリーズナブルに担ってくれる時代に突入しつつあったり・・・。いつの間にか、法務のキャリアパスは八方塞がりになってしまったようです。













まあまあそう悲観的にならないで(笑)。
書にも書いたとおり、「頭抜けた経営幹部」になれば、転職はけっこうできると思います。とくに、最近の法務は、
「CSR確立」
「ダイバシティ問題を全社視点でとらえる」
「国際経営と人権」
「コンプライアンス委員会の立ち上げ方、ホイッスルビュワーと社内クレイマーの境界線」
なんて感じで、経営問題化していることが、毎年新たに1個2個でてくるじゃないですか。それへの全社的対応を考え、組織作りをする役割って、どこでも必要そうで。
これも、専門知識で勝負というより、全社対応+組織作りだから、やっぱ経営的人材だと思います、立派に。
この当たりへ一皮むけるか、もしくは、「申請業務」「審査業務」で社内行政書士化(事務派遣?)して、どこに行っても生きていけるになるか(笑)。
突き抜けるか、エントリーレベルかはここにもありそうで(笑)。
確かにそのどちらにもあたらない「真ん中」は、社内従属しかなくて、そこが一番人材としても厚くもあるというのは、仰るとおりですが。