会社側にとっても従業員側にとっても、「定めるは易し、守るは難し」な規程の代表格である守秘義務と競業避止義務。私も何回かこのブログでネタにさせていただいています。

【本】営業秘密と競業避止義務の法務―転職を制限したいなら、代償措置を明示せよ
【本】競業避止義務・秘密保持義務―労働者には職業選択の自由が保障されると言っても、実際のところ裁判での勝率は52.7%程度に過ぎない件

しかし、やはり中国への技術流出が具体的かつ顕著なリスクとして発覚していることもあってか、メーカーを中心に会社側が敏感になりはじめていて、そろそろ日本でも「建前」では済まされ無くなりそうな雰囲気を私は感じています。その空気を感じ取ってくださったのか、今月のBLJはかなり濃い守秘・競業避止義務の特集を組んでいて、このクオリティがまたすばらしい。


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不正競争防止法を始めとする法的な側面からの整理、裁判例に見る競業避止義務のタイプごとの有効性判断の解説を専門の先生方が解説するだけで終わらないのが、BLJの良い所。人材業に携わる私から見ても日本でも有数の採用・人事実務のプロ集団と思われる日本GE社の雇用労働法務担当(しかも日本法/NY州法弁護士!)のコメントを取って下さっていて、この「お作法」のリアリティは本当に参考になりました。ざっくりと要約してご紹介させていただくとこんな感じ。

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  • 退職時面談は、法務かコンプライアンス部が担当
  • 守秘義務について、転職先の会社名を教えてくれた社員に対しては、事前にその会社のウェブサイトなどをチェックし、当社の秘密情報が使われるおそれがある部分をお互いに確認し、秘密情報の範囲を具体的に説明し、社員からも質問してもらい、正しく理解してもらう
  • 競業避止義務に関しては、法的効果より、社員に精神的プレッシャーを与える効果に注目
  • 周囲から「競合に転職する懸念がある」という連絡が法務に入る場合、事実関係が確認できるまで自宅待機を命じてメールや会社のデータベースへのアクセス制限を行い、懲戒解雇を含め厳正に対処
  • 警告書として、本人や場合により転職した先の会社に内容証明で警告書を送付することも

ヘタに法務パーソンが法的な有効性だけを追求するとこうはならず、「競業避止義務は具体的に禁止業界や禁止分野を特定した上で、期間を2年内にとどめ、かつ給与の内の◯%を秘密保持義務手当として支払い・・・」などと、頭でっかちな絵空事を述べがちだったりしますが、本当に実務で考えぬくと結局こういうところに落ち着くんだなあということがよく分かりました。特に、退職時面談を法務かコンプライアンス部が担当しているという時点で、上っ面だけでこれらの規程の運用をしている他社とは圧倒的な迫力の差を感じます。

そして、送り出しだけでなく、お迎えの「お作法」も抜かりない。
他社から当社へ転職してくる人にも注意が必要です。当社が訴えられるリスクがあるからです。したがって、候補者に対しては、面接担当者が「我々はあなたの現雇用主に関する情報には関心がないので、絶対話さないでください」とはっきり伝えます。明らかに競合から来ていることが分かっていれば、面談を控えることもありますし、候補者の競業避止義務や守秘義務について質問・説明を受けたこと、このような義務がないことを確認する趣旨の書面を一筆残してもらい、入社時にも同様の書面にサインしてもらいます。

他社から人を引っこ抜いてお客様や技術情報を横取りしようなんていう会社が、永続的に発展するわけもないですし、転職者だってその会社で長持ちするわけないですよね。