dtkさんによる英文契約書論から。準拠法と紛争解決条項について。

英文契約書を読むためのヒント...のようなもの(5)(dtk's blog)
結局のところ、国境をまたぐ可能性のある取引については、法令上強制されているなどの特段の事情がない限りは、個人的には、紛争処理手段は、仲裁で、ということをまず考えます。
そのうえで、仲裁が盛んに行われている先進国(シンガポール、NY、ロンドンとか)での仲裁としたうえで、準拠法については、別途強制されないのであれば、仲裁地の国の法律を指定することを考えます。

もちろん、自社の拠点がある国を裁判管轄にして、自国法が準拠法になれば万々歳ですが、そうはならないのが交渉の常。その場合はdtkさんがおっしゃられているとおり、仲裁のメッカたる都市を仲裁地にして、その仲裁地国の法律を準拠法とするのがベストと私も思います。

この点、私の限られた国際紛争経験から得た教訓を共有させていただくならば、準拠法や紛争解決条項の交渉をリードする鍵はMOU(Memorandum of Understanding)を結ぶ段階にあるんじゃないか、と思っています。

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MOUでは通常、
・両者が将来に向かって協力を模索すること
・本契約を結ぶ場合の骨子
・あくまでnon-bindingであること(履行義務を負わないこと)
・秘密保持
を書くわけですが、最後に、「このMOUに関して紛争がおきた場合の紛争解決の準拠法と裁判管轄(または仲裁地)はこれで。秘密保持義務とこの紛争解決条項のみbindingで。」と書いておくのです。

秘密保持義務以外はnon-bindingということにかまけて、具体的な準拠法・紛争解決手段を書いていないMOUは、世の中には結構あると思います。しかしふと立ち止まって考えれば、non-bindingという“合意“が有効であるかどうかも紛争になりうるわけで、これらを定めていないMOUは、泥沼化する紛争のネタを作ってるだけなんですね(若葉マークの頃は私自身そんなことも気付きませんでした)。
MOU慣れしていない相手方からは、「そこまでMOUで決める必要ないんじゃない?」と言われるかもしれませんが、頑張って説明すれば理解を得られるはずです。

そういう風に、こちらのペースでMOUにおける準拠法・紛争解決手段を自社に有利な条件で入れることができれば、本契約でも同じ紛争解決手段にできる可能性は一気に高まると考えていいと思います。
万が一MOU段階での交渉が難航しても、早いうちに相手方のリーガルが準拠法・紛争解決手段にどれだけこだわっているかの“手の内”が分かるわけなので、それだけでもMOUを結ぶ価値があるというものです。仮に、相手がMOUの段階で準拠法と仲裁地を中立国とする案すら拒絶するなら、それは本契約でも相当苦労させられる相手である、ということです。

この協議を後回しにすると、本契約でコマーシャルな条件、営業上のバーゲニングパワーに引っ張られて、準拠法や紛争解決手段までもが不利なものになりかねません。

non-bindingなMOUに、bindingな準拠法・紛争解決条項を仕込んでおく。このTipが何かのお役に立てれば幸いです。