様々な分野にネットワークを張ること。
社内だけでなく、社外へと人脈をひろげていくこと。

インターネットやSNSが全盛となり、とかく盲目的に「是」とされがちなつながりの広がり。一方で、そこに得も言われぬ抵抗を感じる人は少なくないはず。

ネットワーク・つながりには、光もあれば闇もある。その闇とはどういうものか?闇をできるだけ避けながら、光の側面を取り入れるにはどうすればよいか?日本のネットワークサイエンスの第一人者である安田雪教授が、電子メール・SNS(mixi)・新型インフルエンザの伝播を題材にした自身の研究をベースに書き下ろした本が、こちらの新書。

「つながり」を突き止めろ 入門!ネットワーク・サイエンス


人間は敵から自分を防御することには長けているが、自分の親しい人々から自分を防御するのが下手だということ。
秘密を漏らすのは自分ではなく、親しい友人や知人である。まったくの赤の他人が、生死に関わるような人生の悲劇を自分にもたらすことは稀である。

サラリーマンで言えば、自分が転職を考えていることが漏れるのが、自分が相談した信頼できる(はずの)同僚からだったりするのは、よくある話。とはいえ、人間は一人で生きて行けない以上、つながりを拒絶することはできません。これに対し、著者の安田先生は、ネットワークサイエンスの見地から、「入りを制する」ことで、つながりが持つ闇を光に変えていくことが重要だと述べます。

人とのかかわりの強さと恐ろしさの本質は、自分が出す関係ではなく、自分に入ってくる関係に潜んでいる。
自分が誰を好きかは、自分には自明だ。わからないのは、誰が自分を好きなのか、である。自分から能動的に誰かに頼り、誰かに助けてもらおうとすることはできる。能動的なアクションは起こしやすく制御しやすい。一方、自分に向けられた好意、自分へさしのべられている善意は、なかなか感知できない。自分に向けられていて自分がまだ気がついていない、他社からの潜在的な援助や愛情、避けるべき悪意や妨害も含めて、他者から自分に向けられてくる関係を、どこまで認知、制御、活用できるかが人生の豊かさを大いに左右する。


さて、この一節を読んで思い浮かべざるを得ないのが、Facebookが09年から取り入れた「いいね!」ボタン及び「ファン」という仕組みと概念についてです。

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10月以降、日本でもブームに火がついた感のあるFacebook。Twitterやmixiとの比較論でその優位性が語られることが多いですが、知り合いというネットワークを可視化するフレンド申請と承認というSNSの基本概念に加えて、「いいね!」ボタンと「ファン」の仕組み・概念を実装し、ユーザーが自分に寄せられる好意・善意を把握できるようにしたことで、加速度的にユーザー数を伸ばしています。これはまさに、本書で述べられるネットワークサイエンスを応用し、安田先生が提案する「入りを制する」手段をユーザーに提供しはじめたものにほかなりません。

そう考えると、この施策は単なる広告ビジネスとしての商業的意味合いだけではない、Facebookにとってもっと深い意味を持った施策に思えてきます。

人間の行為や嗜好、信条を決定するのは、性別や年齢、生まれついての傾向などではない。学歴や出身地でもない。それは、その人が誰と共に過ごしたか、誰に取り囲まれているか。誰に影響を受けるか、誰に影響を与えようとしているのか。すなわちその人を取り囲むネットワークなのだ。
人間を理解するためには、その人の持つ関係を理解することが重要だ。組織や社会を理解するためには、そのなかで人がつながっているのかを知る必要がある。だが関係は眼に見えないのでわからないことが多い。敢えて蓋を開けず曖昧なままにしているのが生きる知恵でもある。だからこそこれを支配し、制御するものは、人々を、組織を、社会を制御する可能性を持つ。

Facebookは、その洗練された仕組みによってユーザーに「入りを制する」力を与え、私たちは今、それを喜んで使っています。

しかしそれと引き換えに私たちは、人々を、組織を、社会を制御する可能性すら秘めた「全ユーザーのつながりと興味・関心の流れを神の視点で掌握する」力をFacebookに与えている、とも言えます。

ソーシャルネットワーク、特にその中でもFacebookが持つ恐ろしさは、単に個人のプライバシーがダダ漏れになるかもということ以上にこの点にこそあると言うのが本書を読んだ感想であり、改めて、Facebookが持つ底知れない野心のようなものを認識させられました。