なんでFacebookが急に流行り出したの?(そりゃみんな新しモノ好きだからですよ)とか、Facebookの何が特徴なの?(写真・動画・位置情報を含むアクティビティストリームがリアルタイムで共有されるライブ感じゃないですか)とか、Facebookで世の中どう変わるの?(あらゆるコミュニケーションと決済を含む経済活動がこの上で行われるようになるんでしょうね)とか、その辺りの話は私がするまでもなく皆さんの間で語りつくされている様子。

そこで、弊ブログでは趣向を変えまして、Facebookが引き起こすプライバシーリスクを、Facebook先進国で実際に発生している事件を例に挙げながらまとめてみようと思います。Facebookをはじめたばかりだけどなんか怖いという方、そしてはじめないための理由を探している方(笑)にも、参考にしていただければと思います。

1)所属する会社・学校から排除される

これは簡単に想像つきますよね。就業規則や校則に違反する行為をやっている様が、時間や場所のアリバイ付きで、場合によっては写真付きで残るわけですから、簡単に解雇・退学になりえるわけです。発生確率の上ではもっとも高いリスクでしょう。

実際、イギリスの名門Oxford Universityでは、乱痴気騒ぎを起こしていた学生がFacebookを証拠にして処罰されるという事件も。学生ならではのこんなこともできなくなるなんて、寂しいお話でもあります。

Harboring Data: Information Security, Law, and the Corporation (Stanford Law Books)

In July 2007, Oxford proctors in charge of university discipline at the ancient university used Facebook to find evidence of students breaking university disciplinary rules. Students, who, in post-exam hilarity, had held wild parties, sprayed each other with Champagne or shaving form, or thrown flour bombs at each other, often posted photos of these incidents on Facebook. Proctors combed Facebook for evidence of such incidents and caught a number of students in flagrante. As a result, some students received disciplinary emails or more vigorous sanctions.

いわんや日本のサラリーマンをや、就業時間中に遊んでいたり、いるはずのないロケーションにいることがFacebookを通じて雇用主に見つかれば、会社は「職務専念義務違反」でいとも簡単に労働者に懲罰を与えることができる点ご注意を。

当然、入社・入学前の選考の場面でも、根ほり葉ほりチェックされることになるでしょう。最近では、採用企業に代わってSNS上での発言やアップされている写真その他の行動を調べ上げ、コンプライアンス上の危険を孕む応募者でないかを調べる会社も注目を集めています。人のプライバシーをほじくり返してお金をとるなんてと、嫌悪感を覚える方も多いと思いますが。

友達には見せたくても、会社の上司や学校の先生には見せたくない・・・残念ながら、そのあなたが見せたくない相手こそが、最もそんなネタを欲している人なのですから。

2)配偶者・恋人を失う

まだ日本ではFacebook人口が少ないこともあり、配偶者や恋人同士の2人ともがFacebookを使っている事はそう多くないのかもしれません。しかし、それも時間の問題。似たようなソーシャルグラフ(人間関係)を持っているはずの二人ですから、名前で検索をかけずとも「知り合いかも?」のリストに挙がってくる日は近いでしょう。

mixiやtwitterなどと違ってやっかいなのは、実名・写真付きなので「俺じゃないよ」なんてとぼけようもなく承認せざるを得ないところ。それまでの言いたい放題やりたい放題の投稿は見られ、いわくつきの友達のリストもすべて実名・写真付きでさらされるわけです。

極端な事例かもしれませんが、実際に重婚生活がFacebookでバレた、というケースがこれ。

Don't Put Your Secret Second Marriage Photos on Facebook(GAWKER)
Lynn France was a little suspicious when her husband claimed to have gone to China, even though he left his passport at home in Cleveland the whole time. But dang, the worst part came when her relatives pointed her to the Facebook page of the blonde Florida lady where there were "dozens of wedding photos" of this other lady with Lynn's husband. And also the lady's last name was now "France." Ouch.

さらにどうにもならないのが、友人がつける「いいね!」やコメント、写真に付けられる名前タグの数々。プライバシー設定を徹底して「一部の友達のみに公開」としたアイテムでも、友人が「いいね!」をつけたり自分の名前タグをつけたりすると、公開しない相手だったはずの人にも、アイテムが見えてしまう場合があります。頑張って投稿の内容が差し支えないものになるように気を付けたとしても、悪友が自分の掲示板などに「お前あのとき○○だったよな」と不意にコメント書き込むことも。そしてそれは配偶者・恋人のストリームにも流れて・・・と、よほどやましいことをしていない自信がなければ、ヤバいことになるのは時間の問題ですね。

裏表のない人生なんて面白くない、家族や恋人には見られたくない一面もある、という方には絶対向かないサービスです。Facebookは。

3)金融機関等のサービスが利用できなくなる

友人とつながるために公開したつもりの情報が、知らぬ間に商用利用されるというリスクも。金融機関など信用をビジネスにする会社からみれば、Facebookにはもっとも有り難い情報が詰まっているわけですから、当然の展開なのかもしれません。

昨年このブログでご紹介しましたが、これもカナダで起こった実話。
マニュライフ保険会社に加入していた方が、精神疾患での休職を理由とした保険金支払いを請求したら、Facebookにアップした楽しそうにバーで飲んだりパーティに参加している写真が原因で、保険会社に支払いを拒絶されたという話です。

Insurer Questions Woman's Depression Claim After Spotting Her Party Pics on Facebook(Law.com)
A Canadian woman on sick leave for depression said Monday she would fight an insurance company's decision to cut her benefits after her agent found photos on Facebook of her vacationing, at a bar and at a party.

保険の加入時健康チェックや金融機関のローン査定がSNSにも及ぶのは、時間の問題なのではないかと思います。「最近体の調子が悪い」とか、「仕事で干されてリストラ寸前」なんてつぶやきをTwitterでも見ることがありますが、そういう書き込みをしたがために保険に入れなくなったり、借金ができなくなるなんて、困った時代になりそうです。

4)犯罪に巻き込まれる

ロケーションをストリームに流したことで家にいない間を狙った空き巣に入られたり、ストーキングされたり、ひどいケースでは無差別殺人に巻き込まれたり・・・。悲しいけれど、Facebookが引き起こしている現実のリスクです。

そこまでいかなくても、詐欺に巻き込まれるリスクは相当高まっています。昨年はこんな詐欺が流行りました。

フェースブックに潜む危険な罠(Newsweeek)
詐欺はどのように行われるのか。例えばサンフランシスコにあるジンガ社が開発したファームビルに登録したとする。

毎月6300万人がプレーするこのゲームでユーザーは、オンライン上の畑に種をまいて作物を収穫する。種や土地などを購入するのに必要なポイントは実際にジンガ社に送金して買うことができるし、サイト上に掲載される広告をクリックし、リンク先企業の調査に協力してポイントを稼ぐこともできる。

試しにその1つ、「IQクイズ」を受けてみよう。結果を受け取るには、携帯電話の番号を打ち込まなければならない。打ち込むと携帯電話に識別番号が送られてくる。ユーザーはそれをサイトに入力するが、実は「番号を打ち込むと月額9・99ドルの星占いサービスに加入します」と細かい文字で書かれている。翌月の携帯電話の請求書を見て、初めてだまされたと気付く──。

こういった犯罪には、Facebookをやっていなくても巻き込まれるのかもしれませんが、Facebookが当たり前のように公開させるライフログが犯罪を発生しやすくさせるという点は、否定しようもありません。

5)疲れる

日常の自分をありのままに曝け出せるならば、Facebookはあなたと友人とのリレーションシップを強化する武器となるでしょう。しかし、そうでないならば、情報の共有に気を使い、友人が発信する情報をコントロールし、取りつくろうことに追われて、新たな疲れを生む原因となるものだと思います。

Facebookは実名を求め(実名でないアカウントは規約違反で削除される)、他人が自分のストリームに書き込むことすらできるまでの開放性をも求めてきます。それらにすべて対処・反応しようとすると、耐えられないほどの時間を消費することになるでしょう。リアルでは時に偽名でも行動は可能であり、家に閉じこもっていることもできるのに対して、Facebookは参加する以上はそれが許されない世界であるという点は、大きな違いです。

便利さ・楽しさ・新しい体験と引き換えにFacebookがあなたに要求するプライバシーの開放は、人によっては大きなストレス源にもなりうるということを分かって利用する必要がありそうです。


以上述べたリスクのすべてを防ぐことは困難ですが、いくつかはプライバシー設定によって防ぐことができます。プライバシー設定を高めれば高めるほど、Facebookをやる意味が薄れる効果もあり一長一短なのですが、心配な方はこちらを参考になさってください。

Facebookをミニマリスト化して、プライバシー対策を万全にする方法(lifehacker)
Facebookをやる上で知っとくべき7個のプライバシー設定方法(lastday.jp)
▼『Facebookポケットガイド』P52ー68