ジョージ・クルーニー演じる"リストラ宣告人"ビンガムが、年間300日を超える出張生活の中で築いた人生の哲学、それが「バックパックに入らない人生の荷物は背負わない」。そんな彼の目標は、マイレージを貯めて(使うのではなく)ある記録を達成すること。

そのビンガムの仕事と個人的な目標が、優秀な新入社員のビジネス構造改革案によって窮地に立たされ、同時に起こる人々との触れ合いにも惑わされながら、自分の人生哲学を見つめ直していく、そんなお話。DVD化を楽しみにしていたこの映画が8/27に発売されたということで、早速TSUTAYAへ。

マイレージ、マイライフ [DVD]


男性のビジネスパーソンだったら、絶対に楽しめる映画でしょう。特に出張の多い方であれば、旅なれたビンガムの挙動に自分を重ねあわせて観ることが出来て、それだけでも楽しいはず。



ジョージ・クルーニーはオーシャンズ11ぐらいしか記憶に残ってない俳優(失礼)でしたが、これはハマリ役だと思います。会話と演技だけで見せるヒューマンドラマなこの映画は、彼の安定感なしには成り立たなかったかもしれません。

で、私が観たかったのはそのジョージ・クルーニーではなく、アメリカの人材ビジネスとアメリカ型解雇の「実際」。整理解雇が自由にできるアメリカにおいて、従業員相手にクビを告げつつ再就職支援サービスを提供するコンサルタントがどんな風にこのビジネスをしているのか、そして従業員たちが解雇の通知をどう受け止めるのかという点。この映画は、何十人もの解雇通告のシーンを通して、そこが丁寧に描写されているのが良かったです。たとえばこんなシーン。

ビンガム:「あなたは、お子さんから尊敬されたいのですね?」
従業員 :「今日、こうして安定した収入が得られる仕事を失った父親は、もう尊敬されないだろうね。」
ビンガム:「でも、尊敬されていないのは、前からでは?」
従業員 :「・・・失礼な、何だって?」
ビンガム:「レジュメによれば、あなたはフランス料理の学校へ通い優秀な成績を修め、料理人を目指していたようですが、その夢をあきらめてこの会社に就職した。」
従業員 :「そうだ。」
ビンガム:「しかし、いつかは料理人に、とお考えだったのでは。」
従業員 :「・・・」
ビンガム:「あなたのお子さんは、安定した収入を得て帰ってくる父親を尊敬するのでしょうか。そうではなくて、夢を追いかけ続ける父親を尊敬するのでは?」

ただし、これは映画に出てくる解雇通告シーンの中で、ビンガムがコンサルタントとして相手をうまく納得させることができたほぼ唯一の事例。

他のケースでは、取り乱したり、怒って物を投げつけたり、泣き崩れたり、すがったり、挙句の果てには自殺予告をしてみたり・・・と、リアルな従業員の姿が描かれます。整理解雇が合法なアメリカであっても、人格を否定されるかのようなこの行為を人間の感情としては到底受け入れることはできず、そう簡単には済まないということ。だからこそ、ビンガムのようなリストラコンサルタントに職があるわけで。歴史的背景により整理解雇に免疫がない日本でアメリカ型解雇自由が導入されれば、なおさらでしょう。

今ちょうど巷で流行りつつある「解雇解禁」。私も肯定派ではありますが、こういった解雇の現実を想像した上で主張しなければ、と。