2010年以降の企業法務を考えるにあたって、研究すべきテーマは何でしょう?と問われたら、2つ返事でこう答えています。
「プライバシーでしょうね」と。
中でも把握しておくべきキーワードは、企業広告における“行動ターゲティング”です。企業が消費者のweb閲覧履歴やライフログを収集しマーケティングや広告宣伝に利用することの是非は、以前このblogでも取り上げたDPI(ディープ・パケット・インスペクション)問題然り、これから日本でも大論争間違いなしと読んでいます。
もちろん、広告業界にお勤めの方はとっくにご存知のキーワードなのでしょうが、あまりご存知でないという方も多いはず。この本からお読みになると良いです。
『生き残るための広告技術 進化したインターネット広告「行動ターゲティング」のすべて
行動ターゲティングは、幅広い消費者を特性や行動履歴、志向に応じて小さくとも意味のあるグループに分類していく手法である。
携帯端末・無線技術の進歩と普及により、私たち消費者の特性・行動履歴・志向を事業者が把握することはますます容易になっています。そうした中静かに発展してきたのが、この行動ターゲティングというマーケティング&広告手法。消費者の生活を企業が利益のためにのぞき見するような感覚には当然根強い抵抗もあるわけで、企業が行動ターゲティングをしているという認知が消費者に広まるにつれ、プライバシーの論争がこれまでとは違う新たな局面を迎えるのは、想像に難くありません。
さて、このブログの読者の方は、広報やマーケティングの部署の方は少ないはずです。プライバシーの本を紹介するならいざしらず、行動ターゲティングの本を紹介しているのはなぜか。それは、行動ターゲティングのプライバシー侵害性を正しく検討・判断できるようになるためには、まず行動ターゲティングがもたらすメリットを正しく知ることが大切だと思うからです。そのことはまさにこの本でも次のように語られています。
「メリット」は重要なキーワードだ。私たちは行動する前に、自分のためになるかを考える。自分との関連性が重要なのだ。(p114)
社会の積極的な一員であるためには、一定量の個人情報の開示が必要となってくる。例えば、意志に個人情報を明らかにすることを拒否したら、診断や治療を受けることは非常に難しいだろう。同様に、ローンを申し込むために銀行を訪れても、財務状況の開示を拒否すれば、ローンを組めずに家に引き返すしかないだろう。(略)受けたいサービスと開示するプライバシーの価値は比例しているのだ。(p116)
この本は、Google,Amazonが教えを請うマーケティング界のグルRob Grahamの著書を翻訳したパートをベースに、巻頭には日本のネット広告業デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム社による概論、そして巻末にはYahoo/mixi/Nikkeinet/スバル他のマーケティング担当者インタビュー、ITジャーナリストの佐々木俊尚氏が寄稿するコラムなどがふんだんに盛り込まれています。広告業界の専門誌的な感じで、行動ターゲティングに関する「今」「これから」「得られるメリット」が手軽に理解できます。

気になるのはAmazonの評点の低さ。ただインターネットマーケティングを実業で専門にやってる私の後輩に「行動ターゲティングの入門書をどれか1冊あげるとしたら?」と聞いて推薦してもらった本でもあるので、スジは悪くないと思ってます。










行動ターゲティング広告は広告主にとっては極めて生産性が高くありがたい発明だが、ネットの利用者にとってはアクセス履歴を無断でのぞかれ、プライバシーの侵害にあたり迷惑以外の何物でもない。このページの文責者及び紹介された本の編者は広告主と広告業者の立場からしかこのテーマを捉えていない。
>社会の積極的な一員であるためには、一定量の個人情報の開示が必要となってくる。例えば、意志に個人情報を明らかにすることを拒否したら、診断や治療を受けることは非常に難しいだろう。同様に、ローンを申し込むために銀行を訪れても、財務状況の開示を拒否すれば、ローンを組めずに家に引き返すしかないだろう。(略)受けたいサービスと開示するプライバシーの価値は比例しているのだ。
上の引用文はプライバシー侵害を正当化するための詭弁に過ぎない。サービスを受けるためにプライバシーの開示が必要になる場合があるのは事実だが、それはあくまでサービスの利用者が同意した場合のみだ。今回問題なのはネットの利用者が同意することなく広告主と広告業者が勝手にプライバシーに踏み込んでいることで、本の引用は見当違いの例えだ。それから、記事を書くときには誤字脱字のチェックを忘れずに。文脈からは『意志』ではなく『医師』だ。