もし、あなたがまだスティーブ・ジョブズのプレゼンテーションを一度もご覧になったことがないなら、まずはこちらをご覧あれ。


これは、2007年にアップル社がiPhoneをはじめて世に出した時のもの。今やほとんどの方がiPhoneとは何かをご存知だと思いますが、知っているはずの製品なのに惹き付けられてしまう。

その秘密はどこにあるのかを、18の法則に細かく分けて分析・解説するのがこの本。現在Amazonでもトップ10に入る売れ行きです。

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則


本書を読み終わったら、各幕の中で一番心に残った所のタイトルをシーンごとに紙に書き出してほしい。(著者あとがき)
とのことなので、以下素直に従ってみたら、わかっちゃいるけど普段は忘れてしまって出来ていない3つのことが見事に炙り出された感じです。

1)一番大事な問いに答える(第1幕「ストーリーを作る」より)

聴衆は情報を求めている。学びたいという意欲を持っている。楽しみたいとも思っている。製品に関する情報を手に入れ、その使い方を学ぶとともに学ぶ過程を楽しみたい。そう思っている。しかし、人々が一番知りたいのは別のことだ。なぜ注目する必要があるのか、である。

なぜ注目する必要があるのかを先に提示すること、もっと言えば、じっと黙ってこのプレゼンを聞く“必然性”がどうしてあるのかを先に言うこと。それがないプレゼンテーションはすべて押し付けにしかならず聞く耳を持ってもらえない、というわけです。

多くのプレゼンターがこのことを忘れたままプレゼンテーションをしているのに対し、ジョブズはこの「私(観ている人)がそれを欲しくなる必然性」を自然なストーリーで語る天才だと私も思います。そしてそれは、ジョブズ自身が心底欲しいと思っていたものを社員が忠実に製品化しているとも言えます。ジョブス自身が待ちわびていたからこそ、製品がようやく出来たことを自然なストーリーで、かつ情熱的に語れるという面もあるかもしれません。

2)小道具を上手に使う(第2幕「体験を提供する」より)

ジョブズはデモを中心に必ずと言っていいほどプレゼンテーションに小道具を使う。

プレゼンテーションの中でデモや実機を使う。このあたり前のことを私は意識していなかったように思います。皆さんも、プレゼンが始まる前にプロモーションビデオを流す、終わった後に実機試用会場に案内する、というのがせいぜいではないでしょうか。

プレゼン中にデモや実機の試用を混ぜると、オペレーションはそれだけ複雑になり、失敗のリスクも増えます。しかし、プレゼンを観ている人の「興味」を「確信」に変えるには、実際にその場で観て貰わなくてどうするの?というわけです。

加えて、プレゼンの中で行うデモには、以下にあるように聴衆にとって「休憩」の効果も生むという点は、知っておいて損はないでしょう。
10分たつと聴衆は話を聞かなくなる。11分ではなく必ず10分で。
これは認知機能の研究で明らかになった重要情報である。簡単にいえば脳があきるのだ。(略)
スティーブ・ジョブズは脳にあきる暇を与えない、30分のプレゼンテーションにはデモもあるし、第2のスピーカーが登場したり、場合によっては第3のスピーカーまで登場する。ビデオクリップも登場する。疲れて刺激を欲しがる脳には自分の説得力も歯が立たないとよくわかっているのだ。

3)目的にあった服装をする(第3幕「仕上げと練習」より)

衣装についてのアドバイスは、米陸軍特殊作戦部隊に所属していた英雄、マット・エヴァーズマンが教えてくれた以上のものはない。(略)リーダーたるもの、他の人よりも少しだけよい服を着るべきだと教えてくれた。新しい部下に会うときには、その部下よりも少しだけ余計に輝く靴と少しだけ白がきわだつシャツ、少しだけよくプレスが効いたズボンを履いておくというのだ。
会社が違えば文化も違う。アップルは反骨性、創造性を持ち、「シンク・ディファレント」を大事にする会社だ。だから、ウォール街の会社よりもラフな格好でかまわないのだ。

自分の会社の文化をわきまえた上で、お客様の前に登壇する立場に相応しい良い服装を選び、清潔感のある着こなしをせよ、というこの当たり前のアドバイスが守れていないだらしないプレゼンターや、IT・メディア系だからラフな格好でも許されると勘違いしているプレゼンターに遭遇し、がっかりした経験は少なからずあるのではないでしょうか。

果たして自分はそう見えていないか、これを読んで少しハッとさせられました。大丈夫でしたかね?>今までリアルでお会いしている方。


最後に蛇足ながら注意点を。
この本ではジョブズ流のスライドの作り方はあまり解説されていません。もしあなたがスライドの作り方にも課題を感じているのであれば、この本でも引用されまくっている『プレゼンテーションzen』もあわせてご覧になることをお薦めします。