2年前のこと、私はブログポリシーを定める企業が増えるのではないか、という予測記事を書きました。

サラリーマンブロガーのみなさんは、在籍企業が“ブログポリシー”を制定する未来を見据えておきましょう(企業法務マンサバイバル)
日本ではまだ“ブログポリシー”をきちんと定めている企業は少ないと思われますが、これだけ日本にブログ人口が多くなってくると、各社が規定化してくるのも時間の問題と思われます。

この予測はものの見事に外れ(笑)、従業員によるブログ利用は日本企業にとってはそれほどの脅威・リスクとは感じられなかったようで、ブログポリシーを定める企業はごく少数にとどまったと思います。

ところが、去年から今年にかけて、ブログよりも簡単にはじめられて続けるにも敷居が低いというところから、ビジネスパーソンのTwitter利用が加速し、さらに、手軽に始められる新たなマーケティング手法として、業務の一環で従業員にFacebook等を含めたソーシャルメディア利用を推奨する企業も増えており、企業としての内部統制・リスクマネジメント的観点から「ソーシャルメディア利用についてのガイドラインを定めなければ」という課題意識は高まっているように見受けます。

そこで今日は、既にソーシャルメディアガイドラインを定めている企業の先例を参考に、私が考える「従業員のソーシャルメディア利用について企業がガイドラインを制定するにあたり抑えるべきポイント5つ」をまとめてみたいと思います。

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1.ソーシャルメディアの特性を理解させる

ソーシャルメディアとツールが進化してネット上で何かを発信する敷居が下がるということは、その反面ネット上で発生しうるリスクをきちんと認識できないまま情報発信する従業員が増えるということも意味します。

そこで対策として、ITリテラシーの低い社員にも分かる言葉で、
  • ソーシャルメディアでの発言は容易に拡散する
  • ソーシャルメディアでの発言は容易には消せない
  • ソーシャルメディアではなりすましが発生することがある
  • ソーシャルメディアによっては現在地情報が漏れるものがある
といったメディア特性を具体的に例示し、理解させることが重要になります。

2.ソーシャルメディアで発信してはいけない情報を具体的に例示する

上記1の特性を理解している従業員であれば、ソーシャルメディア上で発信してよい情報・悪い情報を自分で判断して適切に対処できるはずです。しかし、あなたの会社においてはそのような「勘のいい」「わきまえのある」従業員ばかりではないかもしれません。

そこで対策として、発信をしてはいけない情報をガイドライン上にはっきりとわかりやすく例示する必要があります。例えば、こんなものが挙げられるでしょう。
  • 自社および取引先を含む関係会社について知り得ている営業秘密に関する発信を会社やその情報主体者の承諾なしにしないこと
  • 自社および取引先を含む関係会社について知り得ている将来の業績・財務情報・事業計画などに関する発信をしないこと
  • 顧客・競合他社・雇用主・同僚について、中傷、差別、プライバシー侵害となるような発信をしないこと
  • 他者の知的財産権(著作権)を侵害するような発信をしないこと
  • 政治信条・宗教等、個人の自由である領域について議論し、衝突を起こさないこと
またこれに関連して、誤った発信が元で炎上が起こった際には、率直に詫び、できるだけ速やかかつ誠実に対処すべきこともあわせて定める例が多く見られます。

3.ソーシャルメディアにおいて組織における自分の立場を明示させる

前提として、そのソーシャルメディアの利用が会社のためなのか、個人のためなのかを従業員に自覚させることが重要でしょう。その上で、個人としてプライベートで利用するならば、原則として雇用主を特定しうる属性情報は発信させないようにガイドラインに定めるべきと考えます。

しかしながら、
  • 個人としてプライベートで発信しているが、雇用主を明示している従業員
  • 個人としてプライベートで発信し、雇用主を自ら明示はしていないものの、特定しうる属性情報を発信している従業員
もいると思います。その場合は、「発信する内容が雇用主の見解を代表するものでない」旨を明らかにする“免責事項”をプロフィールに明示させることを検討すべきと考えます。役職者の場合は特に要注意でしょう。なお社長の場合は、自身が会社の代表機関=会社そのものなので、免責事項を書いたところで免責されるかどうかは相当疑問がありますが・・・。

対して、業務として企業の命を受けて従業員が発信している場合はどうでしょうか。多くの場合、「○○部門の公式アカウントです」と明示しているだけのようですが、これも結構危険をはらんでいると思います。たとえば、「カスタマーサポート部門の公式アカウントです」と表明した場合に、発信者側としては「所詮会社の一部門だから、会社を代表しているわけではない」と考えていても、利用者からは「責任ある部門として会社を代表する意見と受け取った」と受け取られかねません。

業務として発信し雇用主を明示して公式を名乗る以上は、責任をもてない発信は行わないよう従業員の自覚とリテラシーを高めることが重要です。念のため、プロフィールにも「このアカウントはカスタマーサポート部門として発信するものであり、最終的な弊社の公式発表・見解を必ずしも表わしているものではない」旨明示をしておくことが、リスクヘッジのためには必要でしょう。ただし、そう明示したからと言ってすべてのリスクがヘッジできるわけではないことも覚悟しましょう。

4.就業時間におけるソーシャルメディアの利用ルールを明示する

上記3)の冒頭に、会社のためのか個人のためなのかを従業員に自覚させることが重要と書きましたが、それと連動して、就業時間におけるソーシャルメディアの利用については明言をしておくべきと思います。

会社のために、公式アカウントの担当者として業務でソーシャルメディアを利用するのであれば、営業時間外におけるコメントチェックや返信など、就業時間外のソーシャルメディア活用を時間外労働として認め手当を支払いさえすれば、特に問題は発生しないと思います。逆に、就業時間外はソーシャルメディアで公式コメントをしないというルールにし、顧客にその旨明示するという対応でも良いと思います。

問題となるのは、個人のためにソーシャルメディアを利用する場合です。会社のポリシーにもよるとは思いますが、内部統制という観点では就業時間中はソーシャルメディアを個人的な目的で利用してはならない旨、はっきりと明示しておく必要があると私は考えます。時として個人アカウントを利用して業務上の情報収集のために検索・閲覧することはあっても、個人的な目的で発信行為を就業時間中に行うのは、労働法的には職務専念義務に違反するということは、しっかりと認識させるべきではないでしょうか。

しかしながら、各社のガイドラインの実例見ていると、なぜかこの部分に具体的に言及している例は多くありません。全面的に禁止にはしにくいという遠慮が働きやすい部分ではありますが、ここは今後各社の課題になってくると思います。

5.ガイドラインに反したソーシャルメディアの利用を行った場合、懲戒処分となることを認識させる

最近、業務中のTwitter利用が原因で解雇された従業員のニュースが話題になりました。

他人事ではない? ツイッターのやりすぎで会社をクビに(ASCII.jp)
クビになった原因は、「勤務中にツイッターばかり見ていて仕事のスピードが遅くなった」ためという。
さらに、勤務中のツイッターではなく、ツイッターに投稿した失言により会社をクビになったユーザーもあらわれた。

このようなニュースが話題になるのも、ある種一般人の感覚では「Twitterごとき本当にクビになるのか・・・」と意外に厳しい結果と写ったからでしょう。上記4)の観点とも関連しますが、コトが起こってから社内にショックを走るようなことにならないよう、不適切な利用には厳しい対処で望むという姿勢を、あらかじめはっきりと示しておくべきだと思います。


以上が、私が考えるソーシャルメディアガイドライン制定のポイントです。

世の中に公表されているソーシャルメディアガイドラインの中では、IBMのガイドラインが有名で、模範的といわれています。しかし私が今まで見た中では、上記の視点を網羅的に踏まえ、かつ具体的で分かり易くよくまとまっているなと評価しているのは、実はインテルのガイドラインです。

インテル・ソーシャルメディア・ガイドライン

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特に、上記1)や3)の視点については「エンゲージメント・ルール」の項にかなり具体的に言及されていて、従業員にとって分かりやすいものになっていると思います。しかも、公式アカウント担当者には「デジタルIQ トレーニング」なる研修が用意されていることが示されているあたり、その徹底ぶりが口だけではないことが分かります。
パクるのは著作権法上問題ですが、ヒントにされることをお勧めします。