このエントリを書いて約1ヶ月、遅ればせながらようやく原著を入手して読了。

日本の終身雇用文化の何がダメかって、サラリーマンの自主・自立を阻害するのがダメなんだ(企業法務マンサバイバル)
モチベーション1.0が動物としての生存本能に基づく欲求、2.0が与えられた目標を達成することで金銭や名誉を獲得することを目指す欲求なのに対し、モチベーション3.0は、成長・知的興奮を求める自発的な欲求のこと。

そして、そのモチベーション3.0を支える重要な要素が
1)自主・自立
2)熟達・専門性
3)理念・目的
の3つであり、これまでのカネに基づく成果主義(=モチベーション2.0)では創造性を破壊するばかりで、これからより求められるイノベーションを生む原動力とはならないよ、というのがダニエル・ピンクの主張。

ぶっちゃけ、前半の本編146ページでは、東洋経済を読んで私がまとめた上記要約以上の示唆は得られず(笑)拍子抜けしたのですが、後半の付録を含めたトータルパッケージで見ると、読む価値はある本です。

DRiVE ― The Surprising Truth About What Motivates Us


ダニエル・ピンクは現代版チクセントミハイを目指してる?

前半部は、正直言ってチクセントミハイの『フロー体験 喜びの現象学』の引用があまりに多かった所が少し鼻につきました。あの本で言ってること「小さな仕事・小さな困難に小さな楽しみを見出し、それを積み重ねてハイになる」は共感できるんですが、具体的な手法論に欠けてあまり好きな本じゃないのです。

しかし、本書がその『フロー体験』に不足する具体的手法論に踏み込み、かつ現代版にアレンジすることにチャレンジしている点は、好感がもてました。特に、本編の後には70ページものボリュームで“TypeーI Tool Kit”と名付けられた即効性の高いHOW TO集をつけていて、実際前半部分よりもむしろこの付録が読んでいて面白かったです。

たとえば、こんな「モチベーショナル・ポスター」を作ったら?なんていう古典的なテクニックから、

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ドラッガー、ジム・コリンズ、ゲイリー・ハメルら経営のグル達のモチベーション語録までついているという・・・ダニエル・ピンクにそんな自己啓発的な要素を期待してなかったんですけど(苦笑)。

やっぱり日本の解雇規制は全ての元凶だった

その付録の中から、経営者の視点から「モチベーション経営」を考える上で、P172のこのHOW TOは非常に重要かもと思ったのがこれ。

Higher wages could actually reduce a company's cost.
The pay-more-than-average approach can offer an ellegant way to bypass "if-then" rewards, eliminate concerns about unfariness, and help take the issue of money off the table. It's another way to allow people to focus on the work itself. Indeed, other economists have shown that providing an employee a high level of base pay does more to boost performance and organizational commitment than an attractive bonus structure.

「できたらあげるよ」的成功報酬型ではなく、ほんのちょっとでもいいから平均より高いベース賃金を払う約束をあらかじめしてあげれば、お金のことで従業員のモチベーションを損なう心配がないと。

安っぽく聞こえるかもしれませんが、ベース賃金を世の中の平均水準より少し高くするだけで、「俺たちは皆、その他大勢に比べれば正当に評価されているんだ」という自信・プライドを、(評価される一部の従業員だけでなく)全従業員にもたせることができるということだと思います。上記引用部で言及されている"economists"が誰でその言説がどんなものなのかは分かりませんが、私が勤めてきた2社とも、このアプローチを意図的にとっている会社だったので、このことは実感としても共感できます。

なのに、人材業の立場から日本の求人を見ていると、ほとんどが逆のアプローチ、つまり「基本給は低く・残業手当もありませんが、頑張った人には“ボーナス”できちんと支払います。」という会社のまあ多いこと。この手法では、採用に成功したとしても、一回でも平均値を上回って支払われなかったときに人は「裏切られた」と感じ、辞めていってしまう。

分かっているのに、どうしてベース賃金を高く設定できないのか。それはやはり、日本では労働法上の解雇規制がキツすぎるからなのではないでしょうか。自由に解雇ができない日本においては、みんなのベース賃金を一律に上げることは、経営として将来を考えた時に資源配分の自由を失う恐怖感につながるからです。

正規・非正規問題といい、在籍社員のモチベーション問題といい、なんだか全ての元凶が日本の「終身雇用維持」という幻想・強迫観念にあると思わざるを得ません。