著者の一人としてライセンス契約の本を出版したばかりの身でありながら、他人様のライセンス契約の本をお薦めしてどうする、と出版社さんからお叱りを受けそうですが、やっぱりいいものはいいのでご紹介を。

コンテンツ商品化の法律と実務


著者は出版社で約25年にわたり編集・制作、商品化権、海外翻訳出版、契約法務などの実務を担当された後、ご自身で著作権管理事業者を立ち上げる傍ら、東京理科大学専門職大学院で知的財産の講義を受け持たれているという、このライセンスの世界で生き続けてきた実務家。

その頭の中にあふれんばかりに詰まっているであろうノウハウを、法律や契約に親しみがない人にも分かるように丁寧に噛み砕いて整理してたら、こんなにコンパクトな分かりやすい本ができました、という感じの、適切な章立てとボリュームコントロールがこの本の最大のウリ。

第1章でまず、コンテンツ・ビジネスとは何かという定義をはっきりさせた上で商品化契約・商品化権の現在をのべ、

第2章では、そのコンテンツ・ビジネスにかかわる法律を、著作権法や商標法のみならず、特許・意匠・実用新案・民・不正競争防止法まで含めて概観し、

第3・4章では、基本的なライセンス契約書の構成、その中でも実務上特に気を付けるべき点(アプルーバルの規定の仕方・受け方、ロイヤルティの計算基準、類似商品の取り扱い)をライセンサー/ライセンシーの両視点から指摘し、

第5章では、知的財産に関する国際条約の変遷をたどりながら、特にアジアにおける最近の知財保護法制度についての概要をまとめ、

最後の第6章で、以下7種の各種契約書の作例とひな型を提示する(5以のみ英文契約サンプル)、という構成。
1)出版契約書
2)翻訳出版契約書
3)外国語出版契約書
4)電子媒体等への使用契約書
5)商品化契約書
6)広告等のプロモーション契約書
7)映像化等の契約書

これだけの盛りだくさんの内容を250ページ(資料編50ページを除く)にまとめたのは、実務家として抑えるべきポイントを過不足なく承知しているからこそなせる技。
実務を知らない方が著作権法の解説を必要以上に細かく書いてお茶を濁したような本もある中、4年間かけて構成を練り直した(著者あとがきより)とおっしゃるだけのことはあると思います。

強いて短所を挙げるなら、挿絵・図解が少なくテキストばかりの印象が感じられる点でしょうか。

与信・債権回収法務のバイブルとして定評のある『債権回収きほんのき』のライセンス契約版的位置付けで、法務初中級者の教科書として、または法務ではないけれどライセンス契約をビジネスで取り扱う必要がある一般の方向けの入門書として推奨します。