法務部門があるというだけでも「ちゃんとした会社だね」ってことになると思われますが、それ以上に取引審査部門がない会社なんてザラにあります。
そうなると、契約をチェックする法務部門がいつのまにか取引審査もすべき的な責任を負わされるハメになり(笑)、何をすればいいものかと、こんな本を買ってみたりすることに。
『大不況下 危ない取引先の見分け方
そして、みなさんがこの手の本に期待されるのは、決まって決算書を読んで新規取引先の危ない兆候を簡単に見抜く方法だったりして。
しかし、ここ何年か取引企業の審査という業務に携わっていた経験から思うに、新規取引の時に銀行でもない相手に決算書を数年分耳をそろえて提供してくれる会社はそうそうないですし、決算書の細かい数字を見たところで、よっぽどどうしようもない会社でない限り何も読み取れないよと(継続取引中であれば、数字の変化で相手の健康状態の変化を読み取る努力はもちろん必要なわけですけれど)。
今日申し上げたいのは、決算書を血眼でチェックするその前に、もっと簡単に気付けるところを見落としているんじゃないかということです。
社名と事業を変えるのはステークホルダーを軽視している証拠
たとえば、相手方の登記簿、特に履歴事項全部証明書をきちんとチェックしていらっしゃる企業さんって、実際どれだけいらっしゃるのでしょうか。
履歴事項全部証明書で確認できることは、確かに表面的で限られた項目だけなのですが、それでも
・社名の変更歴
・事業目的の変更歴
この2つだけはきっちりと見ておくべきです。
変更することがダメだとは言いませんが、変更にストーリーもしくは必然性があるかどうかは、簡単にダメ会社を見分ける大きなポイントです。この2項目のいずれかが5年内で2回以上変わっている会社は、基本的に怪しいと思った上で、必ず相手にその変更理由を確認してみます。社名や事業目的を変更した理由を聞いてもストーリーや必然性が語られない、語られてもうわべに感じられるようだったら、その会社との取引はやめておいた方がいいでしょう。
会社の信用・ブランドそのものである社名を理由もなく変更する会社は、まず間違いなく顧客との長期的な信頼関係を築く気がない会社だと断言できますし、事業目的を簡単に変更する会社は、その事業に賭けて投資した株主や入社した従業員を平気で裏切る会社だということです。
どんな優秀な経営者がその変更を判断したとしても、顧客・株主・従業員という3大ステークホルダーを軽視するそんな会社に未来はありません。
最近の倒産実例を挙げるならば、商工ローンで名を馳せたものの民事再生法適用を申請し破算手続開始決定に至ったS社などは、直近数年間で自社を含むグループ各社の社名・事業目的の変更を繰り返していた分かりやすい末期事例でしょう。
私は、この2つをチェックするだけで、新規取引審査の9割方は済んだも同然だと思っています。










確かに履歴事項全部証明書を見ると、その会社が何をしようとしているのか、また、どんな状態であるのか、かなり読み取ることができますよね。
私の個人的な印象では、資本金が1,000万円から3,000万円規模の会社が、新株予約権を何度も発行していたり、無闇に増資を繰り返したりしていると、「夢見がちな経営者が事業規模を大きくしようとして行き詰っている」と言えるのではないかと思っています。もちろん一概には言えませんが、審査の取っ掛かりとしては、登記情報は非常に有用なものだと思っています。
審査のプロでもあるtacさんに、今後もいろいろ教えて貰いたいと思っています。
ではでは。