日本でもニュースになっている、米国トヨタ販売の元顧問弁護士がトヨタ車の事故に関する訴訟に対応した際に、会社から不利な情報を隠ぺいするよう強要されたとして、損害賠償等を求めてロサンゼルス連邦地裁に提訴した件について。

顧問弁護士なんだったら単に委任契約を解除して辞任すれば済む話で、なんだかおかしいなあ、と思って色々調べてみると、やっぱり当該訴訟対応の期間“雇用”されていた、いわゆるインハウスローヤーだったみたいですね。

Ex-Toyota Lawyer Sues Automaker(Law.com)
Toyota spokeswoman Zoe Zeigler e-mailed a statement from the company: "We are disappointed that Mr. Biller has elected to file this lawsuit in an attempt to avoid what we believe are his obligations as an attorney formerly employed by Toyota. In our view, Mr. Biller has repeatedly breached his ethical and professional obligations, both as an attorney and in his commitments to us, by violating attorney-client privilege in defiance of a court restraining order that Toyota obtained against him."

トヨタ広報側は「契約上および裁判所命令の秘密保持義務を破った」とかなり強気に非難してます。以前から相当関係性は悪かったであろうことも見てとれます。

私は以前より何度かこのblogで、
インハウスローヤーとして雇用契約で働く/働かせること
 には必ずジレンマを伴うこと

弁護士としてのプロフェッションを支える重要な要素である
 “独立性”を保つためにも雇用ではなく委任とすることが
 両者にとって得策であること

を申し上げてきました。

インハウスローヤーを雇用することの難しさ(企業法務マンサバイバル)
まじめで優秀な弁護士であるほど、弁護士倫理との板挟み(倫理コンフリクト)に苦しみ、最終的に追い詰められれば、法務部長のポストを降りる道を選択せざるを得ないと思います。
まじめでない弁護士(笑)であっても、違法行為に加担した弁護士との社会的非難や、弁護士会からの追放・資格剥奪を想像し、躊躇はするはずで、そのストレスにいつまでも耐えられるとは思えません。
どんなにコンプライアンス精神にあふれた会社でも、法的には不安な部分を抱えながらビジネスをしているわけで、法令順守・弁護士倫理が真っ正直に通ることばかりでなく、法務部従業員と弁護士という立場がストレスなく両立する企業は、存在し得ないのではと思うのです。
インハウスローヤーとしてご活躍されている方々からのご批判を頂戴するのを覚悟の上で申し上げますが、やはり、企業と弁護士との付き合いは、雇用契約ではなく、(準)委任契約という距離を置いた結びつき方がベストではないかと思います。

アメリカで起こったことではあるものの、この解消し得ないジレンマがこうやって実際に紛争となる現実を見るにつけ、その思いを深くする次第です。