リクルートワークスの大久保幸夫さんが書く、雇用問題のこれまでとこれから。

日本の雇用--ほんとうは何が問題なのか


似たようなコンセプトの本を、もうちょっと面白い味付けで海老原さんが先んじて書いてしまっているために、存在感が薄く感じられてしまうのが本当に残念ですが、

さすがはワークスの大久保さん、この本の半分以上が、労働者として、マネージャーとして、会社として、はたまた国として何をすべきか・すべきでないかを提言する内容になっていて、海老原さんの本が読んでいるそばから刺激される“炭酸飲料”だとすれば、この本は閉じた後でジワジワと思考が強化される“滋養強壮剤”のような、そんな味わいの違いがあります。


マネージャーはうろたえるな

まずは身につまされるのが、マネージャーとしてこの雇用不安にどう対処すべきかという点。

雇用調整の実施者にもなり得るつらい立場でありながら、非正規労働者や高齢労働者の増加、雇用不安からくるメンタル問題の多発、外国人労働者への異文化コミュニケーションの難しさ・・・といった問題に、これからも直面し続けるであろうと。

そしてそのような雇用の変化・うねりを自分なりに先読みして、多様化に翻弄されること無く、強いマネジメントをせよ、というメッセージ。

具体的な手法論については残念ながら触れられていないのですが、私は大久保さんの言葉の端々から、「女性だから」「シニアだから」というように可能性を限定せずに、その人が望むキャリアビジョンをできるだけ汲んだ能力開発を支援し、仮にその企業で雇用が継続できなくなっても「私は他の企業でもやれる」という自信を持てるほどに育ててあげることが、マネジャーとしてやれること・やるべきことなのではないか、と思うにいたっています。


職業訓練の見直しが国の急務

他方、雇用不安の今国としてやれること・やるべきことについては、かなり具体的に言及されています。特に大久保さんが提言されているのが、「雇用保険」「職業訓練」「雇用調整助成金」という日本の雇用対策の3本柱を見直すこと。

著者に失礼を承知で思いっきり端折ってその内容をお伝えすると、金銭をただ手厚く受給しやすくした生活保護的な今の方向性は間違いであり、財源を見直しながら、特に非正規労働者が再就職を円滑になるための制度に切り替えていくことが必要、という主張。

雇用保険や雇用調整助成金について、労働政策的な観点だけでなく財源の問題にまで触れているところは、学者にはない大久保さんならではの高度な政策提言だなと思いますし、世の中的にはあまり注目されない職業訓練について大きく取り上げ、国を挙げて強化すべきという問題提起については、私も同じ主張をちょっと前のエントリに書いたところでもあり、とても共感を覚えます。
日本版フレキシキュリティ政策を考えてみた(企業法務マンサバイバル)

中でも、「ものづくり国日本」の維持という古い発想・幻想に固執するあまり、目の前の雇用確保にすらつながらない“手に職”系の職業訓練ばかりになっている実態を批判し、むしろこれから雇用拡大が期待できるサービス業分野に役立つ職業訓練を強化すべきという指摘は、日本の職業訓練政策にまったく欠けている視点であり、私が上記エントリで主張した英語力強化案とあわせて、国には真剣にそして直ちに検討していただきたいところです。