私が誇りにしているこれまでのキャリアの一つに、株主総会の準備・運営業務経験があります。
・招集通知、参考書類、議決権行使書といった文書の準備
はもちろんのこと、
・総会のシナリオを作成し、
・議場をおさえてイベント業者に発注して会場設営し、
・係りを社員に割り振ってレクチャーし、
・株主総会当日は運営事務局として議長の後ろで
顧問弁護士と一緒に議事進行を管理しつつ、
・株主からの質問に回答する社長・役員向けにカンニング
ペーパーを書画カメラを使ってモニターに映し出す
ところまで、なんでもやってました。
会社法知識を中心とした専門性と調整能力の両方を求められる難易度の高い仕事という自負があったのですが、転職活動していてもこのキャリアはまったく売り物になりませんでした。これは意外でしたね。
まあ、売り物にはならなくても、プロジェクトマネジメントの難しさ・コツを学ばせてもらった仕事であり、また法的な責任も伴う大きなイベントを無事にやり遂げたという自信にもつながる仕事でしたので、私の中の誇りには変わりはないのですが。
非上場会社に転職してからというもの、こういう“総会屋”的仕事はなくなってしまい、この時期のリアルな緊張感こそ味わえなくなってしまったわけですが、最低限の知識のアップデートはしようと、この季節になると会社法や株主総会関係の本を読むようにしてます。
そんな中でも、株主総会の変化を的確に捉えたいい本がでていたので、是非ご紹介を。
『株主総会と投票の実務』
拍手や発声で決議することの法的解釈
法務でない方でも、株主総会に一度でも出たことがあれば、違和感を感じたことがあるはず。
形式的に議場に諮っているだけの、拍手や「異議なーし」という発声による白々しい意思表示で淡淡と議案が決議されていく、あの異様な会議の姿に。
この拍手や発声をもって決議とみなすことのアバウトさに関する法的解釈について、はっきりと文字で書かれたものを見たのは、この本がはじめてかも。
会社に提出された包括委任状と出席する役員等の議決権数を加えれば、通常は、議案の成立に必要な議決権数は確保される見通しが立つため、総会上で、出席株主の議決権数をいちいち確認することはせず、拍手等のアバウトな方法で済ませているわけである。拍手等の持つ意味は、大株主(またはその代理人)等の賛否の確認と多数の賛成を得たという外観を得るためという程度にすぎない。
ちなみに、私が事務局にいたときは、議長に「最前列向かって左側に座る大株主5名の意思表示をもって賛成多数が確認されますので、視線を送ってきちんと確認した上でシナリオをすすめてください」と念を押していました。
前職の総会も株主の皆さんにとっては“白々しい会議”ではあったのでしょうが、裏方はかなり真剣に“法的に無効と言われない会議”になるように気を配ってたりするんですよ。
そろそろ投票の準備もしておきますか
そんな白々しい「シャンシャン総会」が当たり前だった日本でも、最近では持合いの解消や株主の権利行使意識の高まりから、議案の成立に必要な議決権数が確保できるかどうかが当日まで定かにならず、投票を行うケースも増えてきています。
商事法務研究会編『株主総会白書2008年版』によれば、3社が投票を実施したとのこと。こうなってくると、総会を運営する会社側としては、当日の“決戦投票”の準備は、しておいてもしすぎることはないでしょう。
株主総会における投票の方法には、大きく分けて
1)挙手(起立)
2)書面
3)電磁的方法
の3つがあるわけですが、議決権カウントの正確さと準備の簡便さのバランスから2)の書面投票が一番適切ということで、この本ではこの書面投票を中心に、具体的準備の方法が述べられます。
ここからは、元三菱UFJ信託で証券代行の視点から総会実務を知り尽くした著者中西敏和さんの強みが最大限発揮される部分。
必要な文書の準備から、受付事務、集計事務、採決に至るまでの法的ポイントを細かくフォローしてくれます。
投票の実践にあたり、特に前もって準備しておいたほうがよさそうなのが、
・出席票と一体化した投票券
・アクリル製の透明の投票箱
の2つ。
後のものは直前でもなんとか間に合いそうですが、この2つだけは前もってどこかに発注して作ってもらう必要ありと思われるので、早めのご検討を。
今年は大丈夫そうだけど、来年あたり議案によっては議決権行使の雲行きが読めないかも・・・という将来の不安を抱えている会社の担当者さんにも、会社法知識の整理とあわせて、安心のためのお守りとしてオススメします。









