今月のBLJの特集「法的リスクの見落とし事例」は、一見地味ながら共感度の高い事例がギュッと集まっている、読み応えのある記事でした。

BUSINESS LAW JOURNAL 2009年 05月号


・秘密保持契約に、よく読むと競業避止条項が入っていた
・サプライヤーとして結ぶ取引基本契約に、「バイヤーの責に
 帰すべき事由による場合を除き、〜損害を賠償しなければな
 らない」という条項を受け入れたことで、“当事者以外”の
 責任も負うことになってしまった
・株主からの質問に対して、ついうっかりインサイダー情報と
 知らずに総会で開示してしまった
などなど、あるある!なケースが勢揃い。


「部門内コピーは合法」?

その中の記事「著作権等侵害トラブルはこうして起きる」の中に、TMI総合法律事務所の宮川先生・升本先生の踏み込んだコメントが。

企業その他の団体において業務上利用するために著作物を複製する行為は、私的使用目的複製にはあたらないとした判例もあります。
と、いわゆる舞台装置設計図複製事件(昭和 48年7月22日東京地裁)に基づく“常識的見解”を披露した上ではあるものの、
社内での文献等のコピーが著作権侵害になるとして一切許されないということにも抵抗を感じます。
会社内の同じ部署の人たちが、数人程度の小規模な会議や研修会の資料として文献等をコピーする場合には、同項の「これに準ずる限られた範囲内」に当たると解釈することも無理ではないのではないかと思います。
つまり、社内であっても部門内コピーは合法という解釈ができるのではないか、という思い切ったご意見を披露されているのです。

厳格な法律解釈に囚われてビジネスを過度に制約すべきではない、という意図が多分に込められていることは分かりますが、さすがに弁護士の先生が公の場でこの発言は行き過ぎでは?とこちらが心配になってしまいました。


100%は無理でも、守るべきものは守る

どこの会社においても、「まあ、良識の範囲でやってるのはしょうがないよね」と現実から目をそらしているであろうこの著作物の社内/部門内コピー問題。法務パーソンの皆さんはどのように考え、対応されていらっしゃるのでしょうか。

現場から正式な見解を求められれば、
「残念ながら、社内で会社のコピー機を使ってコピーしている時点で私的利用とは言えず、部門内に限定した利用であっても、著作権法上はNGです。」
苦悶しながらも、私はそう答えてきました。

私の様なブロガーが増えていることに象徴されるように、一億総クリエータ化も進む現代。何でもかんでも権利でがんじがらめは時代にそぐわないよねとフェアユース論が沸騰しはじめている一方で、100%は無理でも権利者の権利は守れる限りにおいて守っていくべきではないか、というのが私の今のところのスタンスなのですが。

同じ号のBLJの5ページ“OPINION”のコーナーでは、関西大学の森岡教授がちょうどこんなことを述べていらっしゃいます。

問題を労務に限れば、日本企業にはコンプライアンスからほど遠い状況がある。その例は、障害者法定雇用率の未達成、女性賃金差別、不当解雇、賃金不払残業、過労死、偽装請負、労災隠し、最低賃金法違反など挙げればきりがない。

著作権もしかり、労務もしかり、真のコンプライアンスとは、今まで「現実」という一言で解決を先送りし続けた問題を、ひとつひとつ聖域なくクリアしていく終わりなき戦いなのかもしれません。