こういういい本があるのなら早く誰か教えてくれればいいのに、と呟きながら、5ページに1回位のものすごい勢いでドッグイヤー(ページの端を折って目印にするやつ)しまくった本。
法律学習法としてオーソドックスな比較学習法
法律に限りませんが、学習の仕方の一つに、何かと何かを比較してその違いを際立たせながら学んでいく、という方法があります。
通常の民法の学び方で言えば、主流なのはやはり商法との対比だと思います。
一般法としての民法の定めに対して、それに優先する特別法としての商法の定めがあったり、商人間の取引における特別な規定が商法だけに存在する、と言った差異を見つけていく学び方です。
違いを認識することで、記憶にも鮮明に残るし、なぜそのような違いが設けられるのかを考える作業を通して、問題の本質に近づきやすくなることは、皆さん自身も体験・実感されたことがあると思います。
比較対象として意外なほどベストマッチな民法と破産法
今回この本を読んで痛感させられたのは、民法の比較対象として一見相性がよさそうな商法との比較では、民法の本質は考え抜けていなかったのだ、ということ。
そして、民法の本質を考える比較学習の教材としては、破産法がもっともふさわしい、ということです。
たとえば、第1講「債権者平等の原則」のさわり部分を例に挙げると、こんな感じ。
「債権者平等の原則」が、「契約自由の原則」と並ぶ債権法の大原則であると考えられているということは、読者諸君もご存知だろう。ところが、意外なことに、民法の債権法の教科書を見てみると、これについて正面から十分な説明はあまりなされていない。
実際に債権にそうした特長【tac注:債権者平等の原則】が表れるのは、実は破産(倒産)の場合だけなのである。それ以外の通常の場合、特定の債務の弁済期が到来して履行を請求されたときに、債務者が、「その債務だけ履行すると、他の債権者の債権の実現に影響を及ぼすから、債権額に応じて比例配分した額しか支払わない」と抗弁しても、それは認められない。
(前略)破産制度を設けて、破産手続開始決定をして債権者の個別的な取立てをすべて禁止し、破産管財人が破産者(債務者)に代わってその全財産を管理・処分し、そう債権者に公平・平等に分配することにしたのである。
すなわち、破産制度は、民法で大原則とされながら実際には実現されていなかった「債権者平等の原則」を、実際に実現することを目的としており、(後略)
この2法を一緒に学ぶことが、こんなにも相性がいいなんて、ときっと驚かれることと思います。
法学者兼実務家ならではの苦悩の末の視点
民法と破産法とを比較して両法の本質を考えていくという比較法学は、(講義で実践されている教授もいらっしゃるのかもしれませんが)少なくとも書物ではあまり見られなかった発想・手法ではないでしょうか。
このような発想は、一橋大学で教鞭を振るわれながら、弁護士事務所のパートナーとして実務でも活躍されているから著者だからこそ持てたものと思います。
特に、民法と破産法の間に横たわる法の欠缺に関する指摘の数々には、“法律の不備”に苦しみながら実務で解決策を見出してきた著者の日々の苦悩すら感じられます。
破産法の理解を勉強するつもりでこの本を手に取った私も、苦手意識の残る担保物権の理解までもが深まった実感が得られた、超おすすめ書籍です。
関連エントリ:
民法と知的財産法を比較して学ぶ本について、以前ご紹介したエントリです。
▼【本】民法でみる知的財産法―not only 実務的知財法 but also 学術的知財法(企業法務マンサバイバル)









