人材ビジネス業界に身を置くものとして、もっとも戒めるべきこと。
それが選考における男女差別、人種・国籍差別等に代表される就職差別。

ところが、この「差別」というものが、人間が少なからずもつ「偏見」や「ステレオタイプ」と近しいものであるために、どこまでを戒めなければならないのか、分からなくなることがあります。

そんなときは、「差別」と「偏見」と「ステレオタイプ」という言葉をうまく言い分けてくれているこの本を読んで、頭の中を整理します。

ステレオタイプの社会心理学

「女性は手先が器用だ」「ブラジル人はサッカーが上手い」など、ある集団の人々に対し、多くの人が共通したイメージをもっていることがあります。このような、人々を分けるカテゴリーに結びつき、そのカテゴリーに含まれる人が共通してもっていると信じられている特徴のことを「ステレオタイプ(stereotype)」といっています。
ステレオタイプに否定的な感情や評価が結びついた場合を「偏見」としてとらえたいと思います。
差別とは、ある社会的集団の成員に対して選択して行う否定的行動です。(中略)ステレオタイプや偏見がもとになった否定的判断が相手に対する行動として現れた場合と考えます


就職差別との決別は人材ビジネスの永遠のテーマ

採用と差別の問題にかかわる法律として、職業安定法第3条にはこのような規定があります。
第三条  何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない。

最近では、雇用機会均等法の改正により年齢差別も禁じられたところです。

これらの差別というものは、普通の日本人であれば(よほど屈折した教育が施されていない人であれば)理解し注意できますし、そんな露骨な差別をする企業はこの世から即刻退場処分(私の勤務先でもそんな企業は即刻取引停止)でしょう。

「男じゃないとウチはやっていけない。そこのところを分かって推薦してくれる会社だったら使ってやるよ。わかるよね。」

小さな人材紹介会社ではこんな違法な選考を幇助しているとも聞きますが、売り上げの誘惑に負けず、就職差別のリスクを人材紹介会社に押し付けようとする会社にはっきりNoと言う勇気が必要です。


書類選考=ステレオタイプ選考は差別ではない?

しかし、この差別や偏見と文字通り“紙”一重だなと思っているのが、書類選考。

「まだ20代なのに転職歴が3社以上の腰が軽い人を推薦されてもねぇ」
「バンカラな○○大学出身者はウチの社風に合わないんだよ」

転職歴3社以上の人にも、その途中にドラマや避けようのない事情があったのかもしれないし、○○大学出身でも、バンカラな人ばかりじゃない。

それがわかっていても、選考の効率化のためには、応募書類に書かれる限られた情報を手がかりに、応募者を差別や偏見と紙一重のステレオタイプに(無理矢理)当てはめ、ふるいに掛けざるを得ない。

このようなステレオタイプ選考については、法律も労働局の指導も及んでいないのが現実。

それはなぜかというと、最初に見た定義にあるように「ステレオタイプや偏見がもとになった否定的判断が相手に対する行動として現れたもの」が差別なのであって、頭の中で行う書類選考OK/NGの判断は、行動として現れないものだからです。

しかも採用するかしないかの最終結果に対しては憲法を根拠に判例でも認められている“採用の自由”の名の下に説明義務も発生しません。
労働問題Q&A―会社の採用の自由は無制限ですか 労働政策研究・研修機構

このような応募書類によって生まれてしまうステレオタイプに左右されない、その人の個性を丁寧に汲み取れる選考方法を追求していくのも、人材ビジネスの社会的使命と思っています。

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