同じ部署で情報セキュリティを担当している同僚が、情報セキュリティ大学院大学に通っているんですが、こんな大学院ができちゃうぐらい今が旬かもしれない情報セキュリティの世界。

そこの専任講師を務める石井夏生利(かおり)さんによる大変な労作。


個人情報保護法の理念と現代的課題―プライバシー権の歴史と国際的視点個人情報保護法の理念と現代的課題―プライバシー権の歴史と国際的視点 [単行本]
著者:石井 夏生利
出版: 勁草書房
(2008-05-26)


石井さんは私と2つしか年齢が変わらないお若い女性。ユニ・チャーム株式会社法務部でも経験を積まれていたそうです。そのせいか、文章もいわゆる学者肌とは違う親近感を感じます。


英/米/日に渡る圧倒的な判例調査

何がすごいって、とにかく調査している判例の量がすごい。

個人情報、特にプライバシー権の国際水準を探るために、英・米・日の3カ国の判例を原資料にあたって丹念に分析しているのですが、この量がハンパない。

600ページあるこの本の中で、
・イギリスの判例…54ページ
・アメリカの判例…64ページ
・日本の判例…49ページ
・上記3カ国をまとめた考察…27ページ
と、純粋な判例紹介・評釈だけでこれだけのページ数を割いています。しかも1800年代後半の判例まで遡って。石井さんはすべて原資料に当たられているそうですが、この作業だけでも数年かかりそうですね。

この大量の判例にまとめて触れさせてもらったおかげで、プライバシー権の判例と言えば『宴のあと』事件ぐらいしかまともに読んだことがなかった私にも、
  • プライバシー権を正面から認めようとはしなかったイギリス
  • 当初から積極的にプライバシー権を認めようとしたアメリカ
  • イギリスとアメリカで長い年月をかけて整理されたプライバシー権の考え方をそっくりそのままパクった日本
という構図が見えてきて、非常に興味深かったです。


個人情報保護の問題は突き詰めればプライバシー権の問題になる

私が今所属している会社は、ビジネスパーソンの転職を支援するというお仕事。個人情報保護の問題はいくら研究してもしたりないテーマであることを、まさに仕事を通じて実感させられています。

そして特に個人情報保護というテーマの中でも、私の部署は今センシティブ情報をどこまで収集し・伝達すべきなのか(たとえば転職の相談においてコンサルタントが病歴の申告を受けた場合、これを求人企業にどのように伝えるべきか)について検討しています。

私はそんな検討を進める中で、個人情報コントロールの要諦は、行き着くところプライバシー権をきちんと理解できるかどうかにポイントがあるのでは、と思うに至っていました。

石井先生が個人情報保護法を研究対象としつつもこの本のサブタイトルを「プライバシー権の歴史と国際的視点」 と冠されたこと、そしてこの大量のプライバシー権に関する判例を読んで、その確信が深まった次第です。

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