リアルとネットの両世界でうまく生きていくことを求められている世代である私たちに、ポジティブな指針と実例を示し、勇気を与えてくれる本。

GWに読んだ本の中で、一番の刺激をもらいました。


福澤諭吉の『西洋事情』と『学問のすすめ』が対になった存在であるのと同じ意味で、ウェブ時代の意味を描いた『ウェブ進化論』と対になった「その時代に生まれる新しい生き方の可能性」をテーマとした本を、いま時をおかずに書かなければと思ったのだ
梅田望夫さんが提唱するその新しい生き方とは、ネットとリアルの2つの世界の境界領域で、“新しい職業”を積極的に創ろうと努力する生き方

その“新しい職業”を創り出した例として挙げられていたこんなエピソードに、思いっきり心を揺さぶられました。
コールトンの職業はプログラマーだった。しかし彼はフルタイムのミュージシャンとして生きたいという夢を持っていた。一念発起して2005年9月、彼は仕事を辞めて、夢の実現に挑戦することにした。曲を週に一つ必ず書いてレコーディングしブログにアップすることにした(無償で誰もがダウンロード可能、リスナーがお金を支払いたければそれも可能)。
結果、現在はブログの日々の訪問者3,000人、人気の曲のダウンロードは累計50万、月収はコンスタントに3,000ドルから5,000ドルとなり、生計が立つようになった。
(コールトンは、)ネット上に「志向性の共同体」を形成し、ファンと一体になった親密な空間をマネジメントすることで生計を立てている。月収の内訳は、ダウンロード販売とCD販売でその70%。ライブのチケット販売が18%。その他がTシャツなどのオンライン販売。つまり月収の大半は、無償でも手に入る曲にファンが自発的にお金を支払うことに依存している。
どのようにして彼はそんな現在に至ったのか。毎日ブログを書き、少しずつ増えていくファンからの反応を眺めながらコールトンは、ファンはアーティストと友達になりたいのだという重要な発見をしたのである。
コールトンは24時間ステージに立ってファンと接しているような充実感を抱きつつ、毎日何時間もネットに向かい、フルタイムのミュージシャンとして生きている。

この話がなぜそんなにも私の心に響いたのかというと、その昔私自身がまさに、フルタイムのミュージシャンという職業に憧れていたから。

でも「音楽は金にならない」という理由で、あっさりとサラリーマンになってしまった私。

一方、コールトン氏は、金にならない音楽を、どうしたら金にできるか考え、上記のように努力してフルタイムのミュージシャンとして生きる道を創り上げたわけです。

そして、レコードを売り、ステージに立ってファンと触れ合うというミュージシャンの既成概念にとらわれず、ネットによるファンとの触れ合いをステージとした、“新しい「ミュージシャン」という職業”を創り出したのです。

ミュージシャンのように、今まで1:nの「ふれあい」が基本だった仕事、例えば政治家とか宗教家なんかは、“新しい職業”として創りだせる要素満載かもしれません。

フューチャー・オブ・ワーク』や梅田さんの前著『ウェブ進化論』、『ウィキノミクス』などを読みながら、「これからの時代の新しい働き方」について考え抜いていたつもりではあったのですが、リアルの世界で行うビジネスのプロモーションやマーケティングのプラットフォームとしてネットを「使う」発想を持ち続けている限り、“新しい職業”は創り出せないということなんだなと、新たな気付きをもらいました。

ネットの世界は、リアルの世界をより良くするためのツールやプラットフォームなどではなく、全く別の、2つ目の世界であることに気付けているか。

そして、このネットとリアルという2つの世界を股にかける“新しい職業”を創り出すべく、(ネット世界特有の危うさにめげずに)ネット世界を信じ、そこで努力し続けられるか。

これからの時代を創る僕らにとっての大きな課題であり、チャンスでもあります。

週3冊本を読む法務マンの本棚と書評を見たい方はこちらをクリック!(Booklogへのリンク)